「銀河鉄道の夜」考察

宮沢賢治研究①

 

銀河鉄道の夜」考察

ゲーム「銀河鉄道の夜」~もう1つのストーリー~ 3つのエンディングに至るまで

 

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  1. 物語の背景にある賢治の思想

 

賢治の創作した数々の物語には、それぞれに共通する賢治の思想や想いが込められていることが窺えます。

 

今回の題材である「銀河鉄道の夜」においても、そのような賢治の特徴的な思想が所々にちりばめられていることに作品を読むと気づくことができます。

 

まず、賢治の物語において外せないテーマの1つが「人間と自然の関係性」です。

 

賢治は自然が溢れる土地で生まれ育った影響か、鉱物採集が好きだったというのは有名な話で、

 

生み出された物語には美しく、親しみのあるような自然の描写が多く見られます。

 

そのような、生き生きとした自然描写には引き付けられるものがあります。

 

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自然


  しかし、それとは反対に、賢治の作品には「自然の脅威」も同時に描かれています。

人間がどのように自然と関わり生きていくかという大きな課題が時代背景とともにありました。

 

他の作品では、自然の脅威への対策として、人間の智恵を持って生み出された科学の介在など、現代にもつながるような深いテーマが盛り込まれています。

 

 もう1つのテーマとして「自己犠牲」というキーワードが挙げられます。

 

注意するべき点は、この「自己犠牲」というキーワードは、賢治の考察において頻繁に使用される言葉でありながらも、賢治自身が発信していた言葉ではありません。

 

賢治の作品には他人のしあわせを願って献身的に行動する、その結果として命を落としてしまうというような登場人物が度々描かれています(銀河鉄道の夜のカムパネルラもそうですね)。

 

このような描写は戦時下の心理教育として用いられていた事実があり、これを踏まえて、賢治の思想は危険な思想であると批判する論者もいます。

 

しかし、本当にそれらを同一に捉えて良いのでしょうか。

 

もう一度、慎重に考察する必要性があります。

 

結論から述べると、両者には明確な違いがあります。

 

賢治の物語の対立軸として描かれていたのは「人と自然」であること、人と人との争いによって命を落とすということではないということです。

 

むしろ賢治は世界が一つになること、人はみな兄弟なのだからひとりだけを祈ってはいけないということを「農民芸術概論綱要」の中で述べています。

 

「自己犠牲」というキーワードで括ってしまうと両者を混同してしまいがちですが、このような繊細なテーマに関しては、賢治の根本的な思想に立ち返って考えてみることが大事だと言えます。

 

 

  1. もう1つのストーリー

 

前述した内容を踏まえて、この度リリースしたゲームを制作しました。「銀河鉄道の夜」原作の結末は、カムパネルラ(ゲーム中の表記はカンパネルラとしてあります)の死を窺わせるような内容となっています。

 

この物語を読むことで、カムパネルラの死に関わる背景や原因を読者に考えさせる意図が作者の賢治にはあったといえます。

 

「なぜカムパネルラは死んでしまったのか?」その問いかけへの答えとしてゲームでは3つのエンディングを用意しました。

 

宮沢賢治を研究している方から初めて作品に触れる方、子どもから大人まで幅広い方に遊んで頂ければ幸いです。

 

2019.8.31 VyseArt